あらすじ

広大な中国の気侯風土の違いが料理に大きな影響を与えてきた。大別すれば四川・広東・江蘇・山東料理が代表的四大菜系にあげられる。これに湖南・安徽・浙江・福建を加え八大菜系に、さらに湖北と北京の料理をいれて十大菜系に分類できよう。中国には二大食文化圏がある。長江(揚子江)を境にして北方、黄河流域の華北地方では小麦を主食とする。そして、小麦粉製品全体をさして麺食という。一方華南では米が主食となる。上海はその中間の華中に位置しているので、両方の食文化が混在する。南淡（あっさり）、北鹹（塩辛い）、東酸（酸味がある）、西辣（辛い）という中国の成句はそれぞれの特性を端的に物語っています。

”医食同源”の思想：

中国では古くから「食は命なり、食まちがうと病発す。病発しても食正しければ病治す」と考えられてきました。中国料理の基本である五味〈酸・苦・甘・辛・鹹（塩からさ)〉は人間の五臓を養うとされ、健康のためにもバラエティある味とバランスのとれたメニューが大切だとされています。

北京料理:

広東料理:

四季を通じて樹木の濃い緑と、花々の赤に彩られる広州。亜熱帯のこの街には南国の熱さだけではない不思議な熱気が感じられる。それはおそらく人々の食べものへの熱気であろう。

「食在広州」の言葉を生んだ広東料理は四川料理と対象的に、口あたりよく、見た目にもさわやかな感じを与えてくれる。「白灼海蝦」は小指ほどの新鮮な生えびを,沸騰した湯でゆであげた伝統的な名菜。さらにカタツムリ、サルの脳みそや蛇の料理は珍味で食通に喜ばれている。

江南料理:

河川と水田の美しい風土をもった江南の地は、古くから「魚米之郷」と称せられ、米と魚介類が豊かな土地柄で、独自の食文化が生まれている。

原汁や湯(スープ)に凝るのが特徴である。例えば、上海の湯麺や排骨麺の味は格別である。

楊州は江南地方における点心のメッカで、饅頭や包子が名物になっている。店には点心料理専門のコックがいて、特級点心師という国家資格を持っている。

四川は高い山々に囲まれた盆地である。冬は比較的温暖だが、夏は盆地特有の酷暑となる。こうした風土をもつ四川料理の特長は香辛料とくに山椒とトウガラシを基調にした麻辣の味がユニークである。麻はヒリヒリと舌を麻痺させるサンショの辛さであり、辣はピリッとくるトウガラシの辛さである。麻婆豆腐に代表される豆腐料理も大豆食品と調味料・香辛料をうまく複合させた四川ならではの食文化。

四川料理は「一菜一格、百菜百味」と言われるほどに味付けは天下一品で、濃厚な味と香辛料をふんだんに使うのが特徴である。盆地に生じる湿熱の気を封じ体調を整えるために,舌がしびれるような辛さが求められる。

山東料理:

特徴は各種魚介類を使っての海鮮料理で、華北から東北にかけての料理の源流ともなっている。