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石印材

中国の石印材では、寿山・青田・昌化のものが有名であるが、石は産地によって趣が異なる。
寿山石は福建省福州の北、30キロの山あいのくぼ地で採掘される。変化に富んだ色模様から“五色繽紛"と表現されるように、白、黒、紅、緑のほかに特に「田黄」と呼ばれる黄色の石が逸品として珍重されている。青田石は浙江省の青田県で産出され、材質は比較的やわらかく、光沢のある濃い青色が特徴的である。また同省昌化県の「鶏血石」は、水晶のように透き通った材質に輝くばかりの鮮紅色がすばらしく美しい。鶏血石が発見されてから、印材に加工されるようになったのは600年ほど前の明代初期からで、当時は皇帝や貴族への献上の品として貴重なものであった。標高1000メートルの康山嶺一帯が産地だが埋蔵量は極めて少なく、今では値うちのある石のかたまりを発見するのは難しくなったという。

中国では、各種の印材に篆書体で文字を彫る篆刻が古代文化の優れた伝統として3、000年以上伝えられてきた。中国の四大発明は「羅針盤」、「火薬」、「造紙」、「印刷術」であるが、篆刻はこの中の印刷術の前身ともいえるものである。

石印材が一般的に好まれるようになった時期は元代末期からのことだが、篆刻の文字の排列とか内容、形式などに芸術性の要素を加えていったのは明代以降である。清代になると著名な書法家や画家は、同様に篆刻にも秀でた技法を発揮し、呉昌碩は厚みのある落ち着いた風格を見せ、最近では大画家斉白石の豪放な篆刻芸術が知られている。

用途

古代の印で最も早く使われた方法は、「封泥」という実用的な封印方法であった。これは手紙や物品を送る際に、袋の口を縛った紐の結び目に粘土を塗り、その上に差出人の官職姓名のある印を押す「以泥封物」とでもいう制度である。この方法では、粘土が乾いたあとに、袋の口を開けたり結び目をほどいたりすると粘土は容易に壊れてしまうので中途で開けられたりするのを防ぐための最良の方法であったに違いない。

このように実用性から始まった印は、時代が移るにしたがって身分の証としたり、その用途は広がっていった。漢代には一種の護身用の役目も果たしていた。「印鈕」と呼ぶ上の部分に環がついたり、小さな穴をあけた古印材がある。ひもを通して身に帯びることで、邪を避け吉を求めることができると考えたのであろう。

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