少数民族の舞踊はかれらの労働、生活、愛情、風俗習憤と密接に結びついており、娯楽的、大衆的な舞踊が圧倒的多数を占め、ゆたかな民族的特色のある、純朴にして健康な生活の息吹にあふれたものである。中国の蒙古族、チベット族、ウイグル族、ミャオ族、朝鮮族、ヤオ族、ダイ族などは歌舞にすぐれていることでよく知られ、かれらの舞踊芸術は、中国の舞踊史上で重要な位置を占めている。

ウイグル族の舞踊

ウイグル族は古い歴史をもつ民族で、その大多数は新疆に住んでいる。新疆一帯はかつて「西域」と呼ばれていた。紀元前139年に張騫が西域に赴いて以降、中原と西域との関係が緊密になり、早くも紀元前60年に、漢は新疆に「西域都護府」を設置した。唐も「安西都護府」「北庭都護府」を設立し、その後、各王朝はいずれも新疆に行政機構を設けた。漢、唐、とりわけ唐代には新疆の舞踊や音楽が大量に中原に流入し、漢民族から大いに歓迎され、かれらに与えた影饗も大きかった。

『十二木卡姆』(十二のムカム)はウイグル族のあいだで流行した歴史の古い、内容豊かな大型歌舞曲である。その中には古典の朗謡歌曲や民間叙事組曲、舞踊組曲、即興楽曲など合わせて340曲が含まれ、長年にわたって民間で伝承されつづけた。ウイグル族は数多くの古いすぐれた民間舞踊をもっている。たとえば、感情表現がたくみで、華麗な集団舞踊『賽乃姆』(サイナイム)は、大衆のあいだで広く流行した舞踊である。調査によれば、『十二のムカム』はその形成過程において、民間に流行していた『サイナイム』を取り入れたものと思われる。

新彊の南部で流行した『ダオラン・ムカム』は古い舞踊であり、格別の風格をもっている。この歌舞曲の構成は一定の形式をとる。第一楽章はゆったりとした高い音調の散板〔大きな組曲の序曲と終曲に奏される楽曲〕で独唱する。第二楽章『チェコトマン』はゆるやかなテンポによる大勢の合唱である。舞人は旋律に合わせて男女が対になって踊り始める。第三楽章『サイナイム』はモデラートのテンポで、回転しながら進むふたり一組の舞踊である。第四楽章『コナイコス』は明快なリズムの熱情的舞曲で、大勢が円陣を作って舞う。第五楽章『サイリマン』は速いテンポの舞曲で、円陣を作って旋回し、ムードが高まったところで、最後に一ヵ所で急旋回し、高潮した雰囲気のなかで舞踊を終結する。このほか、雄渾な『サマ舞』や優美で変化に富んだ『手鼓舞』など、いずれも古い歴史をもつものである。

「葡萄の収穫」:

ウイグル自治区は果物が豊富で、特にトルファンの葡萄は有名である。この舞踊は、少女が葡萄棚の下で、収穫のときのうれしい気持ちを表したもので、つまんだ葡萄の甘さや酸っぱさを踊りで表現している。

「我的熱瓦甫」(わがルワープ〔弦楽器の一種〕

蒙古族の舞踊

蒙古族は中国北方に住み、多くの部落が長い期間を経て一つに統合された民族である。蒙古族は歌舞に優れ、数多くの音楽や舞踊を創作している。また舞踊は大部分が意気盛んな勇壮なものであり、同時に優美で叙情的な要素をもっている。元代に宮廷で舞われた『十六天魔舞』は、蒙古族の特色をもつ宗教的舞踊である。
『元史』はこれについて次のように記述している。「宮女の三聖奴、妙楽奴、文殊奴などの16人は、その舞にもとづいて十六天魔と呼ばれ、髪は何条にも編んでたらし、象牙の仏冠をかぶり、身には纓絡（ようらく）〔珠玉を編んで作った装身具。頸、胸などにかける〕、長短二重の真紅のあやぎぬの裙子〔スカート〕、肩飾りのついた金縷の上衣、印紐を結えた帯、くつしたをつけ、各人が法器をもち、そのうちのひとりは鈴と杵を持って奏楽する」。
この舞踊は宮中で仏を祭るという宗教的行事が催されるときに演じられたものであった。元末から明初期にかけての人・葉世傑は、「元に十六天魔舞あり、けだし珠縷をもって装飾したる美女16人、菩薩となりて相い舞う」と書いている。この舞踊は後に民間に伝わり演じられるようになったが、支配階級は民衆がこれを演じることを禁止した。

「お箸の踊り」:

民間の踊りで、通常、祝い事のときに踊られる。モンゴル族はこの踊りを通して自分のお祭り気分を表す。

「牧人浪漫曲」:

表現了蒙古族牧民歓楽的放牧生活場景。

「奔騰」:

蒙古族小孩子們騎着駿馬奔馳在草原上,表現了他們英俊、彪悍的形象

チベット族の舞踊

チベット族は歌舞に秀でた民族であり、その多くの民間舞踊は、いずれも古い歴史を有している。『卓』すなわら「鍋荘舞」(クオツァン舞)は600年ほどの歴史をもち、所作はだいたい、二種類に分けられる。一つはゆっくりしたテンポで、舞い姿ものびやかで優美である。もう一つはリズムが速く、舞い姿も動きが激しく奔放である。舞踊動作の多くは動物の形態を模倣したものであるといわれる。勤労人民が創作した『鍋荘舞』は、のちに奴隷主階級によって改ざんされ利用されるようになった。たとえば、『大鍋荘』はきまった祭事や典礼の時にしか踊ることができず、庶民〔農奴〕が勝手に踊ることはできなかった。このほか、古いチベット族の歌舞には次のようなものがある。

『諧』すなわら『弦子舞』――ひとりの男が弦楽器〔二弦胡弓のような弦楽器〕をひきながら先頭に立って舞踊をリードする。舞人はその後につきしたがい歌いながら輪舞する。メロディーはのびやかな快いもので、長い袖を振りながら踊り、その舞い姿は優美である。

『堆謝』――漢民族はこの舞踊を通常『踢踏舞』と呼んでいる。足を蹴る、踏む、跳ぶ、踏みならす、こするなどの所作により、歯切れよく複雑なリズムを舞う。明るく健康的な舞踊である。このほか、一種の総合的な舞踊である『熱巴舞』(ネパ舞)〔ネパはチペット語で、旅芸人のこと〕があり、これは鈴鼓舞、曲芸、漫才および各種の民間舞踊などを盛りこんだものである。様式は自由かったつで、職業的な旅芸人によって演じられることが多かった。

「草原上的熱巴」:

チベットの「踢踏舞」や「弦子舞」「鈴鼓舞」などの民間舞踊を土台に創作された舞踊で、長い袖をゆるやかに振りながら舞う情緒ゆたかな場面もあれば、また男が銅鈴を振り鳴らし、女は平たい太鼓をたたきながら舞う激しく奔放な集団舞踊もある。また個人の特技も含まれていて、非常に内容が豊富である。

「為了永遠的紀念」:

(永遠に記念するため)という意味のこの舞踊は、人びとの故周恩来総理に対する心からの敬愛を表現したものである。

「林卡歓楽」:

チベット族の民間舞踊「踢踏舞」の様式を用いて編成、創作されたもので、リンカは郊外の遊宴という意味である。一群のチベット族の青年たちがゆったりした楽曲に合わせて郊外の遊宴で楽しく踊っている。突然、楽の音が止まり、舞台には整然と力強く足を踏みならす音だけが響きわたる。時には強く、弱く、ゆるく、はやく、そのリズムによって快活な青年たちの心情をたくみに表現する。

ヤオ族の舞踊

広西、湖南、広東の各地に住むヤオ族はいずれも風俗が同じで、宋・元から明・清に至るまでの七、八百年の間、ほとんど大きな変化はみられない。『長鼓舞』の歴史は古く、宋代にはすでにこれについての確かな記載があるが、その起源はさらに古い。今日に至るまで民間に伝承されつづけ、ヤオ族がもっとも愛する舞踊形式となっている。内容は主として家づくりや長鼓づくりの労働生活を表現したものが多く、『文長鼓』の舞い姿は優美であるが、『武長鼓』の動作は粗野で力に満ちている、解放後の有名な『ヤオ族長鼓舞曲』は、ヤオ族の民間舞曲にもとづいて改作したものである。

宋代の『嶺外代答』という間答形式の善物にはヤオ族の生活状況が書かれてある。たとえば、毎年10月におこなう「都貝大王」の祭りについては次のように記述されている。「男女の群れがそれぞれ袖をつらねて踊り、これを踏揺と呼ぶ。男女が互いに意を得れば〔相愛の意〕、男は勇んで女の群れのなかに入り、自分の愛する相手を背負って帰り、夫婦として結ばれる」。若者たちが舞踊を通して結婚の相手を選ぶというヤオ族の古い風習と、祭日の大衆的舞踊行事が生きいきと描き出されている。宋代の人・陸遊も「老学庵筆記」のなかで、湖南の辰州、況州一帯のヤオ族の「男女が集まって踊り歌う」風俗を書いている。

ミャオ族の舞踊

ミャオ族の舞踊の起源は鳥の動作の模倣から始まったという伝説はよく知られている。ミャオ族の『蘆笙舞』は長い歴史をもち、ミャオ族の舞踊の中でもっとも広く一般的に舞われている舞踊である。一般には男がアシで作った笙を吹きながら先頭に立って舞踊をリードし、女はその後について音楽に合わせて踊る。
『皇朝通典』には、雲南のミャオ族は「一人が蘆笙を吹いて先頭に立ち、男女が手をたずさえて旋回しながら舞う」と書いてある。『広輿勝覧』にも、ミャオ族の「蘆笙舞」の絵が入っており、ミャオ族の若い男が蘆笙を吹きながら足をあげて踊り、高く髷を結い、花模様の上着とスカートを身につけた女が左手にショールを持ち、右手は鈴を振りながら踊っている姿が描かれている。絵には次のような説明がついている。
ミャオ族の風俗は「毎年春の初めに、平らな場所を選んで踊り場をつくり、男は蘆笙を吹き、女は鈴を振り、旋回しながら歌い舞う。これを跳月という」。解放後もこの風俗は依然としてミャオ族の間に伝承されつづけている。蘆笙の形は清代のものとほほ同じであるが、蘆笙を吹く男はひとりでなく多数になり、女も踊る時、ショールや鈴を持たずに素手で踊るようになった。

「猴児鼓」:

ミャオ族の民間舞踊「猴児鼓」(猿太鼓)を素材とし、四川省の地方劇の「変臉」の技法をも取りいれて創作された三人舞でおどけた味わいがある。

「花靴を比べ」:

ミャオ族の女の子たちが、自分で刺繍した花の靴を履き比べながら踊っている様子を表現する。

チワン族の舞踊

花山崖壁画は、チワン族の祖先の生活状況を描いた貴重な歴史的資料である。この壁画は主として、広西チワン族自治区の西南部を流れる明江と左江の両岸にそそり立つ岩壁に描かれており、寧明県の花山の壁画が一番規模が大きく、描かれている人物の数ももっとも多いので、この名で呼ばれている。
壁画のなかには盛大な集会や、民衆が楽しげに歌舞に興じている次のような場面が描かれている。人びとが列をつくり、両手をあげ、両膝を折り、腰を落とした姿勢で立っている。ある人物は片足で立ち、もう一本の足は「吸腿」という後方にまっすぐ伸ばした形をとっている。まさにこれからそろって踊りを始めようとしているところのようだ。このほか、両腕を上に向けて開き、「股をひろげた乗馬姿勢」をとっている人物像も多く描かれている。
人物像に混ざって太陽の絵模様のある銅鼓やドラのような円形の物が多く見うけられるが、これは楽器を描いたものである。この秩序だった行列とさまざまな形態の人物像は民衆の歌舞の場面をあらわしたものである。その他『扁担舞』(天秤棒の舞)がある。

トン族の舞踊

トン族には、多彩な民間の文化芸術がある。村は、あずまや、塔、楼閣が一体となった造形芸術である。「蘆笙舞」の踊りは熱気にあふれ、規模も大きく、十人から1000人におよぶ人が蘆笙を吹きながら踊る。その動きは変化に富んでいて豪放である。歌と踊りが密接に結びつき、さらにトン族の民族的な情趣も加えてユニークなものを編みだしたのである。トン族の住んでいる地域には、泉や渓流がたくさんあり、これらは番泉、花渓と呼ばれる。祭りのたびに、娘たちは、泉や渓流のそばに集まり、髪をすいたり、顔を洗ったりしておしゃれをする。「番泉」の踊りは、観客を美しい世界の中に誘いこむ。

朝鮮族の舞踊

「看水員」:

朝鮮族の舞踊を基礎として創作されたこの舞踊は、苗木をあらわす緑衣をまとった一群の少女たちが、水番の灌概によりすくすく育つというもので、非常に優美な舞踊である。


「長鼓舞」、「農楽舞」

「節日的金欽」(祭りのシンバル)

イー族の舞踊

「快楽的罗嗦」

「阿細跳月」(アーシー、月を跳る):

イー族の民間舞踊を素材に創作された舞踊で、それぞれ、(愉快な人たち)、(アーシー、月を跳る)という意味である。いずれも解放後のイー族の人びとの喜びを表現した舞踊である。

「草笠舞」:

イー族の人びとの生活状況をテーマに創作した舞で、イー族特有の舞踊の風格をもち、軽快活発で美しく、人びとの心をうつ。

彝族の舞踊

「暮叶」:

表現了彝族青年男女以暮叶伝声表現愛情的場景

ダイ族の舞踊

「難忘的溌水節」:

ダイ族の伝統的祭りを反映したこの舞踊は、ダイ族の舞踊形式により、周恩来総理が生前、雲南のシーサンパンナでダイ族の人びととともに水かけ祭を楽しんだ感動的な情景を描いたものである。

「孔雀舞」:

古い歴史をもつダイ族の伝統的舞踊で、元来は男が孔雀をかたどった衣装と装飾具をつけて踊ったものである。これを素材として後に女性による群舞「孔雀舞」が創作され、踊り手は民族の特色をもった軽い舞衣をまとい、すそに孔雀の羽の模様が入ったスカートをつける。そのしょうしゃな舞い姿によって孔雀が羽根をひろげた姿や孔雀の羽ばたき、歩行、飲水の動作などをあらわす。詩情にあふれ絵画的な舞踊である。

「シャオスートンとランウォーナ」:

ダイ族人民の間に長く伝承されている叙事詩「シャオスートン」を改めたものである。その昔、モンパンカ国王は、シャオスートン王子のために嫁選びの儀式をおこなった。たくさんのダイ族の少女たちが嫁に選ばれようとやってきた。大臣のシナは自分の娘を王子に嫁がせようとしたが、王子の拒否にあう。王子は独りで金湖のほとりへ猟に行った時、金湖へ水浴に飛んできた孔雀国の王女ランウォーナに会い、ふたりは愛しあうようになる。ふたりが婚礼の式をあげている時、隣国が攻め入ってきたので、王子は出征する。シナはこの機会に乗じて、ランウォーナは国に不幸をもたらした人間だと中傷し、かの女を追放する。シャオスートンは凱旋してくるとランウォーナの姿がみえない。かれはただちにシナと巫師の陰謀をあばき、ランウォーナをさがしに出かける。さまざまな苦難のすえ、ついに孔雀国でランウォーナをさがしあて、ふたりはめでたく夫婦となった。ダイ族は中国でもすぐれた舞踊伝統をもつ少数民族であり、舞踊劇全体をつらぬく清新な風格と濃厚な民族色は、まるで美しい叙情詩のようである。

「追魚」(魚を追う):

民間舞踊「魚舞」を素材に創作した二人舞である。美しい1匹の魚が水中を自由に泳ぎまわっていると、老いた漁師が水中に入ってきて魚を捕えようとする。魚はあらこちに逃げ隠れするが、最後に漁師に捕えられ、もっていかれそうになる…… が突然、魚は漁師の手の中からするりと逃げて、ふたたび水中に戻るという筋である。この演目は愉快な趣向にとみ、生きいきとした生活状況とダイ族の民間舞踊の風格をそなえている。

「水」:

ダイ族のごくありふれた日常生活の風情を描いたもので、ひとりのダイ族の娘が水がめをかついで川べりにやってくる。かの女は清らかな川の流れをじっとみつめ、ふさふさした黒髪をといて水で洗う。それから水中に跳びこみ、流れる水でひと仕事したあとの疲れを洗い流す。岸に上がると、長く美しい黒髪をふり、旋回しながら、ダイ族の娘独特の髷を結う。舞踊全体が素朴なうえ、見る人の心にしみるような美しい印象をあたえる。

「孔雀舞」(孔雀の舞)

リー族の舞踊

「銭鈴双刀舞」

高山族の舞踊

「杵舞」

雲南阿昌族の舞踊

象脚鼓を使用